承認欲求が強い従業員の特徴とは?
企業が被るリスクやメンタルヘルスケアに関して解説
承認欲求が強い従業員の特徴とは?
企業が被るリスクや
メンタルヘルスケアに関して解説
人間は、程度の差はあれ、誰もが承認欲求(「周囲から認められたい」という欲求)を有しています。ただし、承認欲求が強い従業員が社内にいると、職場環境に様々な影響が及ぶ可能性があります。企業は、従業員が承認欲求と上手に付き合えるように、適切にメンタルヘルスケアを行うと良いでしょう。
本記事では、承認欲求がどのようなものなのかを詳しく解説します。その上で、承認欲求が強い従業員の特徴や、企業が被るリスク、メンタルヘルスケアの適切な実施方法も紹介します。経営者や人事・労務に携わっている方は、ぜひ参考にしてください。
承認欲求とは?
承認欲求とは、他者に受け入れられようとする志向性(「周囲から認められたい」という欲求)です。アメリカの心理学者アブラハム・マズロー(Abraham Maslow)が提唱した「欲求5段階説」で、第4段階の欲求に該当するとされています。
欲求5段階説とは、人間の欲求を以下の5段階に区分する理論です(第1段階が最も低次元で、第5段階が最も高次元)。なお、欲求5段階説では、「人間は、低次元の欲求が満たされると、高次元の欲求を満たすべく行動する」とされます。
● 第1段階:生理的欲求(食欲・睡眠欲など)
● 第2段階:安全欲求(生命の危険が脅かされない状況を望む欲求)
● 第3段階:所属と愛の欲求(「社会的な役割を有し、他者とつながりたい」という欲求)
● 第4段階:承認欲求(「周囲から認められたい」という欲求)
● 第5段階:自己実現欲求(「内面から出てくる願望を実現したい」という欲求)
人間が社会に所属し、活動するためには、他者から受け入れられることが欠かせません。そのため、相手が自己に対して肯定的なイメージを抱くように(または、否定的なイメージを抱かないように)、行動を調整する傾向が見受けられます。
人間の心に組み込まれた自己制御装置のひとつが印象管理(自己呈示)で、印象管理の背景に承認欲求(他者に受け入れられようとする志向性)があります。
SNS疲れから、「承認欲求は悪である」というイメージをお持ちの方がいるかもしれません。しかし、承認欲求は必ずしも「悪」ではなく、社会生活を送る上で重要な役割を果たしています。この事実を理解した上で、上手に付き合っていくと良いでしょう。
承認欲求が強い従業員の特徴
承認欲求が強い従業員は、以下に示す特徴が想定されます。
● ミスを隠蔽する可能性がある
● 自己のミスを他者のせいにする場合がある
● 適切に自己評価できない場合がある
● 極端に横柄な、または、へりくだる傾向がある
それぞれに関して詳しく説明します。
ミスを隠蔽する可能性がある
「相手からネガティブな評価をされたくない」、「嫌われたくない」という欲求が強い従業員は、他者から否定されることを恐れる傾向が見受けられます。
ミスを隠蔽する危険性があるため、日ごろからミスを報告しやすい関係性づくりが大事です。
自己のミスを他者のせいにする場合がある
「上司や同僚に認められたい」、「仕事ができない人だと思われたくない」という欲求が強い場合、自分のミスをすぐに受け入れられない傾向が見受けられます。状況によっては、ミスを他者(同僚・取引先など)のせいにする可能性があります。
ミスは誰にでも起こり得るため、感情的に叱責をしたりせず、再発防止のために建設的な話し合いができるよう努めるとよいでしょう。
適切に自己評価できない場合がある
「プラスの評価を受けたい」、「賞讃を受けたい」という欲求が強い従業員は、適切に自己評価できず、成果や実績を誇張する場合があるかもしれません。
評価をする際は、本人の申告内容も考慮しつつ、客観的な視点で精査しましょう。
極端に横柄な、または、へりくだる傾向がある
「賞讃を受けたい」という欲求が強いと、相手の話を聞くよりも自分の話をする傾向があります。場合によっては、周囲にいる同僚などが「横柄な態度」と感じることがあるかもしれません。
また、「嫌われたくない」という欲求が強い従業員は、自己の主張が否定される可能性がある場面で意見を述べようとしなかったり、へりくだったりするケースがあります。
会議などの重要な場面では、ファシリテーターを置いて発言の機会に偏りが出ないよう工夫するとともに、本人の意思を尊重しつつ建設的な話し合いができるよう、上手く場を取り持つと良いでしょう。
承認欲求の強さが企業に及ぼすリスク
承認欲求の強さが
企業に及ぼすリスク
先述したように、承認欲求は誰もが有しており、必ずしも「悪」ではありません。しかし、承認欲求が強い従業員がいると、以下に示すリスクが企業に及ぶ可能性があることを認識しておきましょう。
● ミスを早期発見できない場合がある
● チームの一体感が損なわれる場合がある
● ハラスメントにつながる可能性がある
それぞれに関して詳しく説明します。
ミスを早期発見できない場合がある
上司や同僚から咎められことを恐れるあまりミスを隠してしまうと、早期発見できず企業が損害を被るリスクがあります。
正しく業務を遂行しているかどうかに関して、自己申告に頼ることを避けましょう。リスクを低減するために、機械的に行動をチェックする仕組み(日報・定例など)の導入も選択肢としてご検討ください。
チームの一体感が損なわれる場合がある
成果や実績を誇張したり手柄をひとり占めしたりする従業員がいると、チームの一体感が損なわれる可能性があります。
業務内容や業務量の差こそあれ、多くの仕事はチームの協力の上に成り立ちます。ポジションや雇用形態に関わらず、各々の働きぶりを客観的に評価する人を置くと良いかもしれません。
ハラスメントにつながる可能性がある
承認欲求が強いと、他者を認めることに難しさを覚える場合があります。これは、他者を認めることは「他者の評価を上げること」であり、「相対的に自己の評価が下がる」と感じられるためです。
チームリーダーや上司にこの傾向がある場合、適正な評価を受けられないなど、状況によっては「ハラスメント」とも受け取れる場面が生じるかもしれません。企業は、ハラスメント防止・予防に努めるとともに、相談窓口を定めるなど対策を講じると良いでしょう。
従業員のメンタルヘルスケアの方法
承認欲求が強い従業員がいる場合、放置していると企業にリスクが及ぶかもしれません。リスクを軽減するために、以下に示す方法で、従業員のメンタルヘルスケアを実践しましょう。
● 承認欲求を満たすコミュニケーションを実施する
● メンタルヘルス教育を推進する
● 従業員の居場所を作る
各方法に関して詳しく説明します。
承認欲求を満たすコミュニケーションを実施する
人間である以上、程度の差こそあれ、誰もが承認欲求を有しています。承認欲求を抑制するのではなく、満たされるようにコミュニケーションしましょう。人は承認欲求が満たされると前向きな気持ちになり、パフォーマンスの向上につながります。
日頃から「〇〇さんの資料が見やすかった」「〇〇さんの対応が早くて助かる」などの言葉(「プラスの評価」と受け止められる言葉)をかけましょう。会社の利益に貢献している場合は、従業員の承認欲求が満たされるように、その事実を伝えてください。
メンタルヘルス教育を推進する
組織として、メンタルヘルス教育を推進し、従業員に対して承認欲求との上手な付き合い方を教えることも重要です。例えば、部下がミスした際に、メンタルヘルスに関する知識がなければ、つい叱責してしまうかもしれません。
しかし、メンタルヘルス教育を受けた上司であれば、「大丈夫?ちゃんと眠れている?」など気配りをしたり、業務量が適切であるかを見極めたりしやすいでしょう。厚生労働省のサイト上に「職場のメンタルヘルス研修ツール」があるので、活用を検討してはいかがでしょうか。
従業員の居場所を作る
近年、テレワークの普及により、従業員同士が直接コミュニケーションする機会が減少しているケースも見受けられます。メンタルヘルスケアの観点から、非公式なコミュニケーション(雑談)の場を設けることも重要です。
Web会議システムを用いて、同じグループ・チームに所属するメンバーによる「雑談ミーティング」を設定するなど、新しいコミュニケーションの場を作ることもひとつの手です。何気ない雑談によって、承認欲求が満たされる場合があります。
健康経営 EXPOで承認欲求に起因するリスクを
低減できるサービスを探そう
健康経営 EXPOで承認欲求に
起因するリスクを低減できる
サービスを探そう
RX Japanが主催する展示会「総務・人事・経理Week」の「健康経営 EXPO」では、メンタルヘルスケアに関連したサービス・ソリューションが多数展示されます。
従業員の健康管理システムやストレスチェック、産業医サービス、睡眠改善サービスなど、メンタルヘルスに関する多様なサービスを提供する企業・団体が出展するため、ぜひご来場の上、最新情報を探してはいかがでしょうか。
また、メンタルヘルスケアに関連したサービス・ソリューションを提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
メンタルヘルスケアを実施して
承認欲求に起因するリスクの低減を
承認欲求とは、他者に受け入れられようとする志向性(「周囲から認められたい」という欲求)です。必ずしも「悪」ではなく、社会生活を送る上で重要な役割を果たしています。
ただし、承認欲求が強い従業員がいると、会社にリスクが及ぶかもしれません。人事・労務に携わっている方は、従業員が承認欲求と上手に付き合えるようにメンタルヘルスケアを適切に実施しましょう。
RX Japanが主催する展示会「総務・人事・経理Week」の「健康経営 EXPO」では、メンタルヘルスケアに関連したサービス・ソリューションが数多く展示されます。
従業員の承認欲求に起因するリスクを低減したい場合は、ご来場の上、最新情報をお探しください。また、メンタルヘルスケアに関連したサービス・ソリューションを提供している企業の場合は、新規顧客を開拓するために、出展を検討してはいかがでしょうか。
「健康経営 EXPO」詳細はこちら
■監修者情報
古田 文子(ふるた ふみこ)
飲食店や販売業、メーカーやコールセンターなど、様々な職種の転職を経験し、マナーやコミュニケーションを学ぶ。現在は企業やNPO団体などでセミナー講師、キャリアカウンセリング、心理カウンセリング、中学校から大学までの就職ガイダンス講師として従事。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、心理相談員、メンタル心理カウンセラー、上級心理カウンセラー、チャイルドカウンセラー、不登校訪問支援カウンセラー、おもちゃインストラクター、調理師、放課後児童クラブ支援員